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ライ麦泥棒つかまえて

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そこで考えたのが、兵を動かすことは戦闘行為とみなされ厳罰に処されますが、双方から代表者一名を選んで一対一で闘い、勝った方が負けた方に望みの領地を明け渡す、というものです。我が家は農地、向こうは溜め池を賭けて臨みます。そこで選ばれたのが戦場で数々の武勲を立てたこの私です。そして、向こうの代表が身長二メートルを超す大男、我々は彼のことをゴリアテと呼んでいます。

彼は元傭兵で剣の腕を磨くために諸国を旅して回っていました。戦のときにもあの巨体ですからひときわ目立っていましたし、その激しい闘いぶりも人間離れしたものでした。剣を一振りすればその風圧だけで軽く十人の男が吹き飛ばされるといいます。そしてその一撃が当たればどんなに分厚い鎧を着込んでいようと、まるでバターに熱したナイフを当てるがごとく、体が真っ二つになるそうです。戦場で彼の歩いた後には死体の山が築かれ、いかなる大軍勢も恐れおののき彼の前には道をあけたと言います。

いささか誇張しているとは思いますが、そんな人間離れをした彼が、こともあろうに伝説の剣を手にしたと言います。これは石の上に突き立てられた一振りの剣で、神に選ばれた者のみがこの剣を抜くことが出来るという言い伝えがあります。いままで何人もの力自慢がこの剣を引き抜こうとしたが、誰一人抜くことができませんでした。しかし、ゴリアテは分けなくこの剣を引き抜いたそうです。彼の剛力を持ってすれば容易いことでしょう。

人間離れした強さに、神から与えられた伝説の剣の使い手。我が家でも名のある騎士や剣士を莫大な借金をしてまで雇おうとしましたが、皆ゴリアテを恐れて誰一人引き受けてくれる人がいません。そこで、父は二人居る息子のうち、長男は家を継がなくてはいけませんから、次男であるこの私を代表として選びました。それに兄はまつりごとは得意なのですが、戦とかこういったことには向いていませんから。根が優しすぎるのです。

そこまで話すと、彼はまた新たに酒を頼んだ。いつのまにか彼の皿の上の料理はなくなっていた。ここまでの話を聞いて、私の彼を見る目も変わってきた。すぐにでも街からたたき出したいうさんくさい男から、死に神を目の前にした哀れな男へと。しかし、常に微笑をたたえた彼の口元からは、死を目前にした悲壮感は全くうかがえない。酒が来るのを待って、私は彼に話の続きを促した。

そして決闘の時がやってきました。この日のために私はそれこそ血のにじむような鍛錬をつみました。名のある剣士もゴリアテを恐れて決闘を断りましたが、剣士から教えを請うことはできました。ゴリアテを前に闘うのは私ですから。そして夜は夜で眠らずにどうやってゴリアテに勝つかだけを考えました。疲れて眠ってしまうことがあっても、その時は夢の中でゴリアテと闘いました。

決闘の場に現れたゴリアテを見て、私も立会人も見物人も皆おどろきました。ゴリアテの手にはやはりあの伝説の剣が握られていました。伝説の剣がどのようなものなのか話でしか聞いたことがなくても、一目みてそれがまさしく伝説の剣であることはわかりました。なぜなら、ゴリアテの持つ剣のきっさきには・・・・・・・・・剣を突き立てた大きな石がついたままだったからです。

いままで黙って彼の話に耳を傾けてきたが、どのようなことなのかわけがわからずに、彼に聞き返した。つまり、ゴリアテは石に刺さった剣を抜くことができずに、石に刺さったままの状態で持ち歩いているらしい。これでは神から選ばれた伝説の剣本来の持ち主は、剣を引き抜くことができないだろう。それにしてもこれでどうやって武器として使うというのか。

それを剣と呼んでいいものかどうか、とにかくどうやって闘うのかは、開始の合図の後すぐに分かりました。剣というより戦槌としてぶんぶん振り回すのです。下手すれば百キロを越えると思われる大石を、剣の先につけたままふりまわすのですからやはり人間離れした怪力の持ち主です。しかし、戦槌ほどの長さはないですし、振り回すスピードはともかく両足で踏ん張るためにゆっくりとしか移動できません。ですから、向こうが一歩踏み出したらこちらは一歩後退して、向こうの間合いに入らなければいいだけの話です。

そこで、まずは前もって考えたように、投石器をつかって遠距離から攻撃しました。私の投げた石はゴリアテの額に吸い込まれていきました。しかし、石はゴリアテの額に当たると砕けて粉々になりました。そこで私は急いで次の石を投石紐に込めると、今度はゴリアテの股間に向けて投げました。石が当たるとゴリアテは股間を押さえ、もんどり打って地面に倒れこみピクリとも動きません。これで勝負は決まったかと思いました。

しかし、ゴリアテはふらふら起き上がったかと思うと、顔を真っ赤にして、さっきとは比べものにならないほどのものすごい早さで向かってきます。邪魔な甲冑をぬぎすてながら、私は死にものぐるいで逃げ回りました。

あやうくもう少しで捕まりそうになったとき、ゴリアテは昨日の間に掘っておいた落とし穴に落ちました。私は逃げながらゴリアテをうまく落とし穴の上に誘い込んでいたのです。

彼は今度もすぐに落とし穴から上ってきました。手には相変わらず、石に突き刺さったままの伝説の剣を持っています。このとき思ったのは、彼は確かに人間離れした怪力の持ち主だけど、頭の悪さも人間離れしていると。

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