主にショートギャグを書いています

ライ麦泥棒つかまえて

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彼との間に子供が出来た。彼にいつ伝えようかと迷っているうちに、「俺はミュージシャンになる」なんて言い出した。だって、楽器なんてなにもひけないじゃない。それに歳ももう28でしょ。仕事もしないでいつもブラブラしてる。パチンコは仕事とは言わないの。彼の親もいい歳した息子にお小遣いをあげて甘やかしている。でも、それは私も同じ。とても彼に父親なんてつとまりそうもない。その前に別れるって言われそう。うちの両親はものすごく厳しいから、勘当されるかも。どうしよう、誰にも相談できない。

気がつくといつも考え事をしている。考えたって答えなんて出ないのに。もう疲れた。考えたくない。いっそのことこの子を・・・

「あの、具合でも悪いのですか?」

気がつくと店長が目の前に居た。また考え込んでいたみたい。私はスーパーの鮮魚売り場で働いている。本当はレジがやりたかったのに、ここの担当にさせられた。

「大丈夫です。ここのところちょっと疲れていたから」

全然大丈夫じゃない。早く帰りたい。

「そうですか。この頃風邪が流行っているみたいだから、気をつけてくださいね。それで話というのは、このところ鮮魚売り場の売り上げが落ち込んでいまして・・・」

店長の話も聞こえてはいるのかけど、外国の言葉みたいに聞こえる。話に集中できない。でも、ちゃんと話を聞いてるように見えるために、適当にうなずく振りをする。

「・・・これ以上の値下げはできないので、お魚の一家団らんのお話を・・・」

もう、早く話が終わらないかな。そう思ってたけど、店長が話すお魚の話に私は段々と引き込まれていった。



「坊や、私の可愛い坊やはどこに行ったの?」

「ママ、僕はここだよ」

「よかった。どこかで迷ったのかと思ったわ。いいこと、お前のような小さなお魚を食べようと怖い大きなお魚が狙っているからね。ママからはぐれないようにね」

「ママ、怖いよ」
 
「大丈夫よ、ママがきっと守って上げるから。だからママの側に居なさい。あれだけいたお前の兄弟達も全部いなくなってしまった。私に残されたのはもうお前だけ。ママの命にかえても必ず守ってみせるから」

「ありがとう、ママ。もう僕怖くないよ。それでね、ママ。ママにプレゼントがあるんだ。ほら、おいしそうな海藻だよ。今日はママの誕生日でしょ、だからプレゼントになる海藻をさがしていたんだ」

「ありがとう、ママ嬉しいわ。でもね、ママにはお前が無事で居てくれることの方がうれしいのよ。プレゼントは嬉しいけど、一人でどこかにいくような、あぶないことはもうしちゃだめよ」

「わかったよ、ママ」

「それじゃあ、お前がとってきてくれた海藻を食べましょうね」

あの、すみません。私は店長の話を遮って声をかけた。店長は一瞬戸惑ったような顔をしてから、今度はすまなそうに頭をかいた。

「ごめんね、話に夢中になっちゃって。それで、ここはこうした方がいいって思うところがあれば気にしないでどんどん言ってね」

店長は相変わらずニコニコしてる。私は思いきって言ってみた。

「魚は認知も育児もしません。では」

私はその場に店長を置いて仕事に戻った。この子をどうしよう。答えは出ない。

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