主にショートギャグを書いています

ライ麦泥棒つかまえて

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レンジャーレッドの放った必殺の蹴り技は、敵の首領カーネル・マクダネルの体ごと弾き飛ばした。彼は背後の岩山に激しく体をぶつけ、その反動で地面に叩きつけられると、二、三度バウンドしてうつぶせのまま動かなくなった。
こうしてスーパーレンジャーと悪の秘密結社ブレイカーブレイドとの長く激しい闘いは終わりを告げた。

レッドの元に、レンジャーグリーンが、レンジャーイエローが、レンジャーピンクが、レンジャーブルーが駆け寄っていく。
「やったな、レッド」
そして皆が口々にレッドの活躍を称えた。
「ありがとう、みんな。みんなのおかげで勝利することができた」

「おめでたい奴らだ・・・」

カーネルが血と埃にまみれた顔をあげている。レッドは止めを刺すためにカーネルに近づいていった。

「やめて、もう彼は戦えないわ」

カーネルの右腕、冷血のマリアがカーネルに覆い被さるようにして彼を庇う。

「駄目だ。彼が自らの野望を捨てるというのなら見逃してやってもいい。だが、この目は死んでいない。野望を、捨てきっていない。復活すればまた同じ過ちを犯すだろう。捨て置くわけにはいかない」

「ああ、そうだ・・・俺はまだ負けちゃいない。負けるわけにはいかないんだ・・・。哀れな奴らだ。本当の敵が誰なのか、何も分かっちゃいない。いいか、お前らを救えるのは俺だけなのだ」

「命乞いか。何が救いだ。俺たちから大事な者を奪っておいて」

「待って。待ってちょうだい。彼の言っていることは本当よ。貴方たちは自分が何者かすら分かっていないわ」

「何を馬鹿なことを。俺は俺だ。北郷孝太郎以外の何者でもない」

「子供の頃の記憶は?家族との思い出は?」

「全部!全部お前らに奪われた。家族を殺され、そのショックで記憶を失った。俺だけじゃ無い。グリーンもブルーもイエローもピンクもだ。孤児となった俺たちを助けてくれたのが九条長官だ」

「それは偽りの記憶よ。九条によって植え付けられた、ね」

「馬鹿馬鹿しい。何のためにそんなことをする必要がある?」

「もともとそんなものありはしないからよ。貴方たちは私たち人間とは違う。人造人間だからよ」

「何を言い出すかと思えば・・・」

「そうかしら?貴方たちはおかしいと思ったことは無い?自分たちの持つ能力について。人間がそんなに速く走ったり、強い力を出せると思う?オリンピックの金メダリストを軽く超えているわ」

「それは血のにじむような努力の結果だ!お前達に対する憎しみがもたらしたものだ!」

「では、その驚異的な回復力は?」

「・・・き、気合いだ」

「気合いで切り落とされた腕がくっついたりしないわ」

「じゃあ、俺たちと対等に戦えるお前達はどうなんだ?」

「私たちは元々人間よ。ただ、貴方たち人造人間と戦うために薬物と機械によって改造をしているわ」

「う、嘘だ。お前達の言うことなんて信じないぞ!」

「本当の事よ。だって、貴方たちは私が造ったのだもの」

「・・・なんだと」

「私たちは元々科学者だったの。そこで人造人間の研究をしていたわ。種としての生命力を失い衰退の道を歩む人類に変わりうる新たな人。最終的には人類と交わり、その子供達は再び種としての活力を取り戻すでしょう。人類はものすごい勢いで人口が減り続けているわ。人類が取り返しの付かないところに来るまでに、人造人間を造り出す必要があったの。言ってみれば接ぎ木のようなものね。だけど、それを別の目的に利用しようとする者が現れた。それが九条よ。彼は人造人間を軍事目的で利用することを思いついたの。彼が目指していたのは人間兵器よ。機械と人との融合。つまり一種のサイボーグとも言えるけど、彼が望んだのはコンピューターの代用品としての脳。人造人間の脳や脊髄を取りだして兵器に組み込む事よ。あなたたちが戦った怪人達はこうして九条によって造られたのよ」

「そんな・・・酷い」
「お、俺たちは仲間同士で戦っていたのか!」
衝撃的な事実を前に、隊員達はただその場に立ちつくすことしかできなかった。

「その後のことは俺が話そう」

冷血のマリアに支えられ上体を起こしたカーネルが言った。話す度に体が痛むのか苦痛に顔を歪める。唇からは血がしたたり落ちている。

「俺は九条の下で肉体を補助するための機械を研究していた。病気や事故、あるいは先天的に体の一部を欠損した場合にそれを埋める機械だ。早い話が義手、義足、義眼や人工臓器の研究だ。研究の成果で神経細胞とそういった機械との接合が可能になった。これで本当の手足のように義手や義足などを動かすことができるようになった。俺が考えていたのは肉体を機械で補助することだった。しかし、九条の考えていたのは機械を肉体の一部を使って動かすことだった。奴は戦争のためのロボット兵を造り出しては、その頭脳として人の脳をつかった。奴ほどの権力を持ってしても、さすがに人間は使えない。だから、人出ない人、人造人間を使った。戦場では不測の事態が起こりうる。機械の脳では対応できない。コンピューターでは複雑な作戦の遂行は不可能だからだ」

カーネルやマリアの話に段々と引き込まれていく仲間達にレッドは危機感を抱いた。知らなかったとは言え、ブレーカーブレイドの首領であるカーネルに必殺技をたたき込み、ブレイカーブレイドを事実上壊滅させたのは他でもない自分なのだ。

(まずい、俺が悪かったような空気になりつつある。なんとかここは白黒をはっきりさせないと、俺の活躍が無かったことになってしまう)

「その九条の元で人間兵器を造っていたお前も同罪だ。言い逃れはよせ。ここでお前に引導を渡してやる。罪はあの世で悔いるのだな」

「まって、レッド!私は自分のことを知りたいの。私には確かに過去の記憶はないわ。そしてただ命じられるままにブレイカーブレイドと戦った。それが正しかったことなのかどうか知りたいの。だから、まずは彼の話を聞きましょう」

無常にも止めをさそうとしていたレッドをピンクが止めた。それでもなお歩みを止めないレッドを他の隊員達全員が止める。

(なんてことだ、どいつもこいつも完全にのまれてやがる。早めに止めを刺してうやむやにする作戦がおじゃんだ)

「・・・そうだ、知らなかったこととは言え、俺も九条と同罪だ。だが、奴の企みを知ってから俺は黙っていられなかった。ちょうどその頃、マリアと出会った。彼女も九条を止めようとしていた」

「だったら、平和的に法に則って行えば良かったんだ。それを破壊活動などするからいけないんだ。目的は手段を正当化しない。やはりお前は悪だ。正義の鉄槌をくだしてやる」

「ちょっと、レッドは黙っていて!」

再びカーネルに止めを刺そうとしたレッドをピンクがきつい口調で止めた。

(なんだと、これではどっちが悪者かわからないじゃないか)

「その通りだ。俺たちも最初はマスコミに訴えたり、裁判を起こしたりした。だが、裁判の結果は、人造人間は生物学的人間ではないので人権は認められない、といって訴えは退けられた。マスコミへの訴えはどのマスコミにも取り合ってもらえなかった。影で九条の圧力があったらしい。そこで九条の持つ権力がどれほどのものか思い知らされることになった。さらに、二人は捕らえられ毎日酷い拷問を受けることになった。この機械の体は戦うためにものだが、もともとはこの時の拷問で肉体の大部分が使えなくなったから改造せざるを得なかったのだ」

「見ろ・・・」そう言ってカーネルはボタンを外し上着の前を開けて上半身を見せた。その途端に全員が息を飲んだ。彼の心臓にあたる部分には大きな穴が開きそこから太いコードが伸びていた。皮膚はあちこちで人工皮膚によるつぎはぎだらけ、縫い跡が縦横無尽に走っていた。

「そこで俺は隙を見て逃げ出した。その際同じように捕らわれていたマリアを見つけ出し助け出した。そして二人でブレイカーブレイドを立ち上げた」

「私がここにいるのはカーネルのおかげよ。でも、私はもう子供をつくることができない体になったわ。機械化してもね。これも生命をもてあそんだ罰があたったのよ」

突如イエローが声を張り上げて言った。
「し、知らなかった。そんなことがあったとは!ゆ、ゆるしてください」

イエローを見ると、彼は変身を解いていた。戦闘態勢を解くと言うことは戦意の無いことの表明である。そして驚いたことに彼は号泣していた。レッドは親友が自分の知らない趣味を見つけ、親友が自分の知らない友人をつくり、自分から段々と離れていくような、一抹の寂しさを感じた。

「待て、イエロー。許しを請うのはまだ早い。お前らにも理由があることは分かった。だが、罪なき人々を己の目的のために犠牲にしたことは許せない。お前達の起こした破壊活動に巻き込まれ、命を落とした人々がいる。やはりお前達は許せない。ここで成敗してくれる!」

「いえ、私たちが狙ったのはあくまで軍事関連施設よ。機械化手術を待つ人造人間の留置施設は最重要施設として最優先で狙ったわ。だけどそのほとんどは間に合わなかった。彼らは機械の体に改造されても、私たちに賛同して協力してくれた。自分たちのような犠牲者をもう出したくない、と言ってね。私たちが民間人をテロの標的にしているというのは、九条とつながりのある政府が流した嘘よ。信じてちょうだい」

「九条の力は我々の想像を遙かに超えていた。奴は研究施設の長というだけではなく、政府とも軍産複合体とも深いつながりがある。我々の仲間は次々と消されていった。君たち人造人間を使ってな。この話をするのは実は二度目なんだ。君たちはおぼえていないようだが」

(おいおい、またコイツとんでも無いことを言い出したぞ)

レッドは内心焦りを感じていた。自分は何も変わっていないのに、価値観が180度変わって正義だった自分が悪になってしまった。

「私たちが君たちレンジャーに絶対勝てない理由は、私たちは君たちを捕らえてもこうして真実を話し開放するからなんだ。しかし、基地に戻れば君たちは記憶を消されてしまう。真実を知ったことを隠し、九条に反旗を翻せばやはり殺されてしまう。だから、このまま基地には戻らずにどこかに去って欲しい。そこで一人の人間として幸せな人生を歩んで欲しい。それが私の願いだ」

「いや、俺の気持ちはすでに決まっている。俺はあんたについていくぜ。ボス」

ブルーに続いて、レッド以外の全員が寝返った。レッドは悩んだ。だが、俺の必殺技を食らったこいつはもしかするとすぐに死ぬかも知れない。そうなれば、冷血のマリアが新たな首領になるにしても、俺は前首領を殺した男となる。事実を知らなかったとはいえ、居心地は良くないだろう。下手をすると首領殺しとして針のムシロかもしれない。だったら、今のまま戦隊に残った方が良さそうだ。ここはなんとか皆を説得しないといけない。

「待て、ブルー。コイツが本当に正義なのか確かめてからでも遅くは無いぞ。お前は捨て犬を拾ったことはあるか?」

レッドを除く戦隊の皆は、コイツ今更何を言い出すんだ、と冷たい目で彼を見た。

「カーネルがいつも膝の上にのせていた猫は捨て猫よ。私は彼の隠れたそう言う優しさに引かれたのよ」

マリアが答えた。うるせーよ、おまえに聞いてないだろとレッドは彼女を睨み付けた。

「なら、子供に好かれるタイプか?」

「・・・昔、学生時代に塾の講師をしていたこともある。子供達のあの笑顔をなんとしても守りたい、若い頃はそう思っていた。私はどこかで道を踏み外してしまったがな・・・」

「では、虫はどうだ?蟻の巣に水を流し込んだりしなかったか?」

場の空気が段々と冷ややかになってきていることにレッドは気付かない。

「子供の頃は腕白だった。そういうことをしたことがあったかも知れない」

そこでレッドは勝ち誇ったような笑みを浮かべていった。

「みろ、やっぱりコイツは悪党だ。俺は正義だ。正義が勝ったんだ・・・」

レッドがつぶやくが、誰も聞いていない。ピンクはマリアに肩を貸し、グリーンとイエローがカーネルを両脇から支えて去って行く。皆変身を解いていた。一人残ったブルーは肩越しにこちらを振り返ると「じゃあな」といって去って行った。しかし、数歩歩いて立ち止まると、「次に会うときは敵味方だな」とつぶやき、再び向こうへ歩き始めた。

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