主にショートギャグを書いています

ライ麦泥棒つかまえて

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昔々、あるところに勇猛で鳴らしたお殿様がいました。若くして家督を継ぐと戦で次々と勝利を収め、領地をどんどん拡大していきます。しかし、重い病にかかり片方の目を失ってしまいます。その後も苦難が次々と襲います。戦で父を失い、母からは疎まれて毒殺されかけます。このようにして苦難を乗り越え手に入れた領地も、もっと大きな力を持つ国の大名に取り上げられてしまいます。

これらのことは今となっては昔のこと。戦国の世も終わりをつげ、平和な時代になりました。勇敢な若殿様も年老いました。そんなある日、お殿様は城にいるみんなを呼び集めました。

「皆に集まってもらったのは他でもない、わしが大事にとっておいた冷蔵庫のプリンを食べようとしたら、冷蔵庫の中に入っておらん。誰か知っておる者はいるか?」

「冷蔵庫の中はよく探しましたか?」
そこで声を上げたのは家臣の小十郎です。

「この前冷蔵庫を開けたら、中に賞味期限切れのもやしとか芽が出たじゃがいもとか、いっぱい入ってましたよ。よく分からないのが、冷蔵庫の中に陣太刀が入っていたことです」

「最近料理にこってて、新しい料理を開発しているところだ。枝豆をすり潰して餡にしてそれを餅にかけたらうまいのではないかと思ってな」

「陣太刀はどこに出てくるんですか?陣太刀関係ないじゃないですか」

「枝豆をすり潰すのに陣太刀がちょうどよかったものでな。できたら、『陣太刀餅』と名付けようかな。これだと語呂が良くないな。『じんだもち』、いや、『ずんだ・・・』」

「そんなことより、冷蔵庫に陣太刀が入っていた件ですよ。どうせ片付けるのが面倒だからって、使い終わった後そのまま枝豆と一緒に冷蔵庫に入れちゃったんでしょ。使ったらちゃんと片付けてくださいよ」

「それで何の話だったか・・・、そうそうプリンだったな。この前焼きプリンを買ってきて楽しみにしてたんだが、今日冷蔵庫を開けたら見付からなくてな。誰かもし知っているなら名乗り出るんだ」

そこで小十郎が挙手をしてまた声をあげました。
「殿・・・」

「小十郎、おまえプリンのことを知っているのか?」

「いえ、そうではなくて、この前冷蔵庫の片付けをしたら眼帯が入っていたんですけど、あれはどうしてですか?

「冷蔵庫に入れておくと付けたときに冷やっとして気持ちいいからな。予備の眼帯だけじゃなくて義眼もいれてるぞ。そういえば義眼も見付からないのだが、それも誰か知らないか?」


「もしかして、あれって腐ったうずらの卵じゃ・・・」

「小重郎、何か知っているのか?」

「い、いえ、何でもありません。そ、そうだ、義眼が無いのなら代わりに何か眼窩に入れてみたらどうですか?小物入れ的な・・・」

「・・・そうそう!前々から思っておったんだが、この眼帯なっ、こうカパっと空いて眼窩に仕込んだ義眼からビームがでるようにしたいんだが・・・」

「ビームでどうするおつもりなんですか?」

「それで猿とか狸とか、こう、なんというか『顔を上げたら勝手に焼けていました』というような、バーベキュー的な、戦国時代に逆戻り・・・」

「何を言っているのですか?とにかくやめてくださいよ。そんなのすぐにバレますって。ただでさえ裏で一揆を先導していただろうとか、いろいろ疑われているのに」

「それで何の話だったか。そうだ、プリンと義眼。誰か見た者はいないのか?」

「殿・・・」

「また、お前か、小十郎。今度は何だ?」

「小型ビームよりも小型ミサイルではどうでしょう?誘導式の」

「こう、目がビヨーンと飛び出したと思ったら、ミサイルだったというわけか。いいかもしれないな。うむ、その件は小十郎に任す。・・・そこでプリンの話だが、誰か見た者はいないか?」

「・・・殿」

「今度はなんだ、小十郎」

「もしかしたら、これは外部の者の仕業かもしれませんよ。ほら、殿は若い頃毒殺されかけたでしょ」

「毒殺だったら、毒入りのプリンが残されていないとおかしいじゃないか」

「ですから、まず殿のお気に入りのプリンを盗む。殿のことですから、無くなったらすぐに新しいプリンをお召しになるはずです。そこで先に盗んだプリンに毒を仕込み新しいプリンとすり替えておくとか」

「・・・ん、それ新しいプリンに毒を仕込んでおけばいいだけの話だろ。警戒心を起こさせてまでわざわざ盗むというのはおかしいじゃないか」

「確かにそうでした。しかし、この前冷蔵庫を整理していて、このようなものを発見しました。見てください、忍者装束です。これはきっとプリンを盗んだ犯人が残したものに違いありません」

「その忍者装束、わしのだ」

「え、殿のものですか?何故忍者装束?何故冷蔵庫の中なんですか?」

「冷やしておくと着たとき冷やっとして気持ちいいだろ」

「では、忍者装束は?」

「いずこかに雇われた忍者が暗殺に来るかもしれないだろ。我が城の警備状態を見極めるため忍者の格好をして忍び込んでみた。ところが、何の苦労もなく天守閣までたどり着いたぞ!いったい警備はどうなってる!!事と次第によってはただではおかんぞ!」

そこで警備主任がおずおずと進み出て言いました。

「この目の黒いうちは、誰であろうと怪しい者を殿に近づけるようなことは決してございません。しかし、この度は怪しい者も何も殿ご本人様ですから。私、何があろうとお仕えする殿のお顔を忘れたりなどいたしません。ですから、顔パスでお通りいただきました。どうして殿が忍者装束をお召しになっているかは気にはなりましたが」

「・・・殿、顔はお隠しにならなかったのですね」小十郎が言いました。

「・・・さて、プリンの件だが、もし今、名乗り出たとしたら、本来は打ち首のところを切腹で済ましてやろう」

「・・・殿」

「やはりお前か、小十郎」

「いえ、違います。私ではありません。それより、ここはどうでしょう、もう少し罰を軽くしては。プリン一つで切腹というのは少し重すぎるような・・・。もちろん私ではないですよ、私では」

「そうか、わかった。では、打擲の刑を申しわたそう。六尺棒で50回打ち据えることにする」

「50回ですか・・・。もう一声どうでしょう?もう一声!」

「どうしてお前がそんなにムキになって減刑を求めるのだ?」

「私が思いますに、その犯人にもやむにやまれぬ事情があったのかもしれません。いえ、きっと、あったのでしょう。誰かが冷蔵庫に入れたまま忘れたのかと思って、賞味期限切れで捨てるよりかは誰かが食べた方がプリンもきっと喜ぶだろう、みたいな・・・」

「やけに、具体的だな。しかし、こんなこともあろうかと冷蔵庫の前に監視カメラを仕込んでおいたのだ」

「えっ!?」

そこで小十郎は思わず声を上げてしまいました。心なしか顔も青ざめています。

「そ、そうだ、殿!ミサイルよりもミカンなどはどうでしょう?お腹が減ったとき眼窩から取りだしていつでも食べられるという・・・」

「この時期みかんなどないぞ、それより小十郎は少し黙っていろ」

映像機材が運び込まれ、冷蔵庫の前に据え付けられた監視カメラの映像が映し出されます。お殿様がリモコンを押すと映像が早送りされ、右下の時刻のカウンターの数字がどんどん変わっていきます。しかし、映像には冷蔵庫が映っているだけで人の姿は全くありません。

小十郎は映像を見ながら滝のような汗をかいていて、さながら頭から水をかぶったようです。汗の量もさることながら、顔色が真っ青です。ですが、小十郎ほどではないにしても、皆汗をかきながら監視カメラの映像に見入っているので誰も気がつきません。小十郎は紫色の唇を振るわせながら、だんだんと震え出し、その震えは時間が経つほどに大きく激しくなっていきました。

そしてとうとう映像の中に人影が現れました。監視カメラの位置からだと、背中しか写りません。その人影が冷蔵庫から何かを取り出すような動作をしたことが、彼の背中越しの映像に映っています。その人影が真っ黒なのは最初は暗いためかと思われましたが、そうではなくて黒い服を着ているからでした。人影は冷蔵庫を閉めるとこちらを振り返ります。手にはプリンを握りしめ、黒い忍者装束を着ていました。そうです、お殿様です。

「あれ、そうかもうプリン食べちゃったのか」頭をかきながらバツが悪そうにお殿様が言いました。

その途端に、一瞬小十郎の震えが止まり、まるで石像のように固まりまると、全身の力が抜けその場に座り込んでしまいました。しかし、ほっとしたのもつかの間、小十郎はお腹を押さえ海老のように背を丸めると、いきなり嘔吐してその場に倒れ込みました。

「どうした、小十郎!、小十郎!」

お殿様が慌てて小十郎に駆け寄っていきます。

「これは、この症状は食中毒だ!早く医師を呼ぶんだ。小十郎、おまえいつ食べた!?」

うめくように小十郎が答えます。
「・・・さ、さっき・・・です」

「何食った、え?何が原因だ?お前、変なもの食ったんだろう、賞味期限切れのやつとか!!」

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